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レビュー「売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密」…中小企業診断士二次試験事例Ⅱの参考になるよ

この記事はビジネス書

「売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密」ダイヤモンド社
著者:木下 勝寿(株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長)

のレビュー記事です。

著者は
ネット通販企業の「北の達人コーポレーション」の
代表取締役社長兼マーケッターの木下勝寿氏。

4年連続で上場し、
2017年株価上昇率日本一1164%の
いわゆるテンガバー銘柄です。

じょうじ
じょうじ
4年連続は史上初らしいよ

あせし
あせし
マーケ部分は中小企業診断士二次試験事例Ⅱの参考になるよ。それではレビューはじめるよ

①売上主義から利益主義へ
②独自の5段階利益管理表による超効率経営
③マーケッターも兼ねる社長のマーケティング戦略

こんな人におすすめ

・起業から4年連続上場までのストーリーを知りたい人
・高利益率の経営方法を学びたい人
・ネットショップの広告の考え方を学びたい人
・中小企業診断士二次試験事例Ⅱの参考事例を学びたい人

①売上主義から利益主義へ

●”売上10倍は「リスク10倍」を意味する”

画像売上10倍リスク10倍

本書では日本の企業で重視されている
「売上主義」から「利益主義」への
シフトの重要性を説いています。

利益が同じ場合、
売上が大きくなればなるほど、リスクが大きくなる。

言い換えると
想定外のアクシデントは利益額ではなく、
売上額に比例して多くなる

と、著者は経験談を話しています。

これは本書には書いてありませんが
利益が同額で売上が大きい企業Aと小さい企業Bでは
損益分岐点売上高が異なります。

利益が同額なので
売上が大きな企業Aは損益分岐点ギリギリの売上高、
売上が小さな企業Bは損益分岐点を大きく超えた売上高となります。

市場の変化で売上高が変動した場合、
容易に赤字に転落するのは企業Aとなりますよね。

ゆえに、安定した経営を行うには
最小の売上で最大の利益を出すことが必要と説いてます。

●なぜ利益主義?→利益こそ社会貢献

”一般的に企業は、まず売り上げを最大化させ、
コストを削減しながら利益を出そうとする。
当社の発想はそれとは’真逆のアプローチ’だ。
利益目標があって、
その目標を達成する’最小の売り上げ目標’を考えているのだ。”

本書より

一般的な企業は
利益よりも売上を重視する風潮がありますが
北の達人では利益を重視しています。
その理由を本書では解説しており、
新入社員や中途入社社員にも研修でその重要性を教えています。

画像利益が重要

企業が利益を出すとその一部を納税する仕組みとなっています。
逆の赤字の企業はほとんど納税していません。

納税したお金(=税金)は国により分配され、
行政サービスや非営利団体の活動費など
社会貢献に役立っています。

また、累進課税制度により、
利益は額が大きくなる程、
税率は大きくなり納税額も大きくなります。

よって、利益を稼げば稼ぐほど納税額は大きくなり、
社会貢献の度合いも大きくなる
ということです。

まとめると「利益=社会貢献」となり、
この会社の「利益主義」の理由
となります。

②独自の5段階利益管理表による超効率経営

本書では独自に考案した「5段階利益管理表」を用いて、
高利益体質の企業を目指しています。

5段階利益は、
利益を商品・サービスごとに次の5段階で見える化する方法だ。
どんな業務にも潜む「隠れコスト」をあぶり出し、
削減することで、会社を利益体質に変える。

本書より

画像5段階利益管理

5段階利益は以下の様に算出されます。

売上        ー原価   =①売上総利益(粗利)
①売上総利益(粗利)ー注文連動費=②純粗利
②純粗利      ー販促費  =③販売利益
③販売利益     ーABC =④ABC利益
④ABC利益      ー運営費 =⑤商品ごと営業利益

一般的には売上ー原価=①売上総利益(粗利)の次は
①売上総利益(粗利)ー●販管費=⑤営業利益を算出しますが

この5段階利益管理表では●販管費を細かく3つに分けて
「注文連動費」・「販促費」・「ABC」として個別に管理し、
さらに各商品ごとに算出、管理して
無駄なコストを細かくあぶり出すという手法です。

また、ABCとは「Activity-Based Costing」の略で商品ごとの人件費となります。
ABCは社員がどの商品にどのくらい時間をかけたかを管理し、
人件費を各商品に振り分けて管理します。

じょうじ
じょうじ
人手をかけないと売れない商品と
放置しても売れる商品でABCが異なるな

本書では
この5段階利益管理を経営者が率先して導入し、
自ら管理することを強く推奨
しています。
そのくらい経営者が本気で経営改善を取り組まないと
利益率は上がっていかないということでしょう。

本書にもあるとおり、
この管理が可能なのはネット通販のみという
シンプルなビジネスモデルだからです。
ネットビジネスだけではなく、
店舗販売や他の販売チャネルや事業があると管理が煩雑になり効率化できません。

③社長兼マーケッターのマーケティング戦略

ネットビジネスで重要なのは広告による集客です。

いい商品を持っていても売れない企業が多い中、
これだけの成長を見せている北の達人コーポレーションは
マーケッターを兼ねる社長自ら手掛ける広告戦略が強みだといえます。

あせし
あせし
ちなみに広告担当者はIQ130の人たちの集まりだそうです。。。

●広告費の最適化→上限CPOと時系列LTVのマネジメント

ネット通販は広告は、
ある意味無限に出せるので
出せば出すほど売り上げは上がりますが、

その分広告費が利益を圧迫してしまいます。
そこで、最適な広告費を求めるために
本書では上限CPOと時系列TVのマネジメントを提唱しています。

まず、CPOとは
「Cost Per Order=1人のお客様を獲得するのにかかるコスト」です。
広告費をかければかけるほどCPOは上がります。

LTVとは
Life Time Value = 顧客生涯価値:顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益を指します。
時系列LTVとはある期間に区切ったLTV。
例えば1か月ごとや1年ごとのLTVの事を指します。

これらの指標は以下の式が成り立ちます。

時系列LTVーCPO=販売利益

ここでの時系列LTVを12か月とすると
販売利益も12か月間で得られる利益となります。

逆に販売利益の目標額を設定すると、
上限となるCPOが決まります。

CPOの上限を超えてしまうと売り上げは上がるものの、
利益は下がってしまいます。

北の達人コーポレーションは利益主義で
利益の目標が明確であるため、
この上限CPOの考え方が可能なんでしょうね。

各アイテムでCPOを最適化するようマネジメントを行っています。

●ターゲティングの最適化

前項では広告費の最適化を挙げましたが
次は「広告を誰に届ける?」という視点での
ターゲティングの最適化について述べています。

最適化①
「イノベーター理論」に基づく消費者分布を活用し
ターゲットをイノベーター、アーリーアダプターのみに絞る

”イノベーター理論とは、新しい製品、サービス市場への普及率を示したマーケッティング理論だ。
1962年、スタンフォード大学のエベレット・ロジャーズ教授が『Deffusion of Innovations』で提唱した。
イノベーター理論では、普及の過程を次の5つの層に分類している。

1.イノーベータ―
2.アーリーアダプター
3.アーリーマジョリティ
4.レイトマジョリティ
5.ラガード

inovator

イノベーターは
「新しいものをまずは試したい」層
新商品を積極的に買う傾向があり、
広告を出しても反応が良く、
CPOは低くなります。

逆にラガードは「保守的に絶対に買わない」層なので
いくら広告を出しても買わないため
CPOは無限大にかかってしまいます。

ゆえに、

イノーベータ―→
アーリーアダプター→
アーリーマジョリティ→
レイトマジョリティ→
ラガード

に向かって、CPOは上がっていく性質があります。

本書では設定した上限CPOを考慮して
イノベーター、アーリーアダプターまでにターゲットを絞っています。

上限CPOの考え方が無いとレイトマジョリティーやラガードまで
広告範囲を広げてしまい
無駄な出費を重ねて利益を圧迫してしまいます。

じょうじ
じょうじ
最後のラガードはどれだけ広告費を投入しても買わないからな

このようにして、
本書では上限CPOの範囲内でターゲットを絞り
効率的な広告を可能にしています。

その他にも以下のような様々なマーケティング戦略が紹介されており
それらの一つ一つが北の達人コーポレーションの強みとなっているのでしょうね。

・マーケティングファネルの思考法によるターゲットの絞り込み
・顧客との関係性強化
・one to one マーケティング

さいごに


ここでは紹介しきれませんでしたが、
売上ゼロでも生き残れる「無収入寿命」という概念を掲げ
企業の守りの部分を強化しています。

攻めの部分では、販売チャネルをネット通販に絞り
小さい市場を狙った商品を扱うなど
小さな企業なりの戦略をとっています。

潜在顧客にどうしたら広告が効率的に届くか?
購入した顧客に継続購入してもらうにはどうすべきか?
企業が大きくなるにつれ社内組織の拡大をどうマネジメントしていくか?

など、かなり具体的に記載されており
非常に参考になる本でした。

著者は社長兼マーケッターということで
マーケティングに関する記述が多く、
中小企業診断士二次試験事例Ⅱの学習に
役立つ本です。

あせし
あせし
参考になれば幸せます。